遺言

遺言について

遺言について

「遺言」と聞いて、皆さんはどのように思いますか。
即、「縁起でもない!」という方もいらっしゃるかもしれません。
実際、私たちの平均寿命は今や格段に延びました。60代、70代をまだまだ若いと自他ともに思える時代です。しかし、これは肉体の発達ではなく、医療の発達がこの平均寿命を押し上げていることは明らかです。将来、病気になったとき、判断能力に自信がなくなったときに備え、元気なうちに自分の気持ちを日記のようにしたためておけば、それを自身が読み返すことで、今日まで生きてこられたことをそのたびに感謝することができるのです。

法律でいう遺言は、自身が死んだ後の財産の行方について主に記載しておくものですが、その前にまずは自分の葬儀のあり方や家族への思い、日頃考えていること等をつづった「エンディングノート」を作成することを、是非お勧めします。何度も自分の思いを書き直してください。今日の日も生きている証として・・・。

3分でわかる遺言

遺言とは?

遺言とは?

死後における自己の財産や身分に関することを、「遺言書」という形で言い残しておくことです。よく「遺言」というと、故人が亡くなる前に病床で言い残した言葉や家族へのメッセージをさすことがありますが、これはここでいう法律上の「遺言」ではないので、区別する必要があります。

遺言書の内容を実現するためには、遺言書が法律(民法)で定められた特定の形式や要件を満たしている必要があります。もしこの形式を満たしていなかったり、遺言書に記載した内容が事実と矛盾していたりすると、せっかく作った遺言書の内容を実現できないばかりでなく、残された家族や身内の間で遺産をめぐるトラブルになってしまいます。それだけに遺言書は、法律の要件を満たし、さらに内容の正しいものを作る必要があるのです。

遺言書の形式は?お薦めは、「公正証書遺言」

遺言書の形式は?お薦めは、「公正証書遺言」

一般に用いられる遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類あり、それぞれ特徴があります。専門家が薦めるのは、何といっても遺言書作成の段階で間違いがなく、紛失しても公証役場で検索できる「公正証書遺言」です。遺言書に記載する財産の額によって公証人の手数料(作成費用)が決まり、自分で作れる自筆証書遺言に比べ費用はかかりますが、何より遺言書として有効なものを作ることが最も大切です。

また「公正証書遺言」では証人2名が必要です。この証人には相続人やある一定の親族はなることができません。そこで作成段階から専門家に相談することで、多くは証人も引受けてくれます。知人、友人に頼むことは、遺言書の存在や内容を知られてしまうこととなり、また頼まれた方も負担になることが多いと思います。

遺言をするには、15歳以上で且つ意思能力があることが必要です。つまり認知症等の場合は、遺言書を作成する段階でどの程度の判断能力が残されていたかが問題となり、本人の死後、相続人の間で有効性が争われる場合があります。 逆に意思能力があれば、身体に障害があっても「公正証書遺言」を作成することは可能です。ふつうは公証役場に遺言者本人が出向きそこで作成しますが、入院している場合や施設に入っている場合でも公証人が出張してくれます。

費用は多少加算されますが、遺言書を作りたいという気持ちがあれば、意思の伝達方法や身体の状況を公証人に電話等で説明し、「公正証書遺言」の作成が可能であるかどうか相談してみてください。

どんな場合に必要か?

どんな場合に必要か?

遺言書は、遺言者の意思を伝えるものですから、財産が多いとか少ないとかいうような特別な事情は必要としません。しかし、相続をさせるにあたって誰に何をどれくらい与えたいか、また逆に相続人であっても何も与えないこともでき、そしてこの遺言を誰に実行してもらいたいかといったことを指定できます。さらに内縁の妻やお世話になった人等に相続人以外の者へ財産を与えることもできます。但し、難しい言葉で「遺留分」といって、配偶者、子ども、両親には最低分保障された取り分があります。

遺言書にこの取り分が残されていない場合、これらの者は遺言者の死亡後または死亡を知った時、あるいは遺留分を侵害する事実を知ってから1年以内であれば、「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」をして、最低限の取り分(遺留分)を取り戻す権利があります。この点は遺言をするときに知っておく必要があります。

また遺言できる内容は財産に関することだけでなく、婚姻外でできた子どもの認知や後見人の指定等身分に関することも可能です。そして遺言書には、その本文とは別に「付言事項」といって、遺される家族への思いや感謝の気持ち、遺言内容についての理由、あるいは今までの人生への感想等を書くことができます。最愛の家族に残すメッセージとして是非活用したいものです。

遺言書は何度でも作れる!

遺言書を書いたのに、その後気が変わったらどうするか。
ご安心ください。遺言書は何度でも作り直すことができます。、もし2つの遺言書があったら日付の新しい遺言書が有効となります。実際、遺言書に記載した者が自分より先に他界することもありますし、仲のよかった息子や娘とその後険悪になったりすることだってあります。また記載した財産にしても何年後かには内容が違ってくることもあるでしょう。そのような時はやはり作り直した方がよいと思います。中途半端な中身の遺言書は、結局相続人に混乱を招くことになり、かえってトラブルの元になるからです。

私は、よく相続・遺言の一般の方に向けた講習会で、「是非、今日家に帰ったら、あるいはご自身の誕生日に自筆証書遺言を書いてみてください」とお勧めしています。最初の1回は試し書きみたいなものになるかもしれませんが、それでも今ある財産をもう一度見直し、同時に今までの人生を振り返って心の整理もできるのです。また毎年誕生日に遺言書を書き直す方のお話もします。今年も健康で今日この日を迎えることができたことに感謝して、清らかな気持ちで遺言書を書くのだと…。

遺言についてさらに詳しく

1.遺言とは

・亡くなった人の意思表示を形にしたものであり、一定の厳格な方式による。
・遺言がない場合は、民法が相続人の相続分を定めているので、これに従う。
・遺言は法律で定められた事項のみ有効であり、被相続人の希望を述べた、いわゆる世上遺言は法律上の意味はない。

2.遺言書に記載できること

① 相続に関すること…相続分や遺産分割の方法の指定、相続人の廃除や廃除の取消し、遺言執行者の指定や指定の委託等
② 財産の処分に関すること…遺贈や寄付行為、信託の設定
③ 身分に関すること…認知、後見人、後見監督人の指定等

※その他付言事項として「家族への感謝の気持ちや思い」「自分の葬儀やお墓のこと」「ペットの世話等」を書くことができる。

3.こんなケースでは遺言を

① 子どもがないので、妻に全てを残してやりたい。
② 息子の嫁が身の廻りの面倒をよくみてくれた。
③ 長年連れ添った伴侶がいるが、入籍をしていない(内縁の妻)
④ 愛人との間に子どもを作ってしまったが、遺言で認知をしたい。財産を残したい。
⑤ 相続人がいないので、財産をお世話になった人や非営利団体に寄付したい。
⑥ 事業を一緒にしてきた長男に、事業所と自宅を残したい。
⑦ 先妻との間の子に特定の財産を残したい。
⑧ 障害のある子どもがいる。自分が死んだ後の後見人を指定しておきたい。
⑨ 先祖から受継いだ土地(農地等)を管理してくれる次男に残したい。

4.遺言能力

意思能力があれば、誰でも可能。
※15歳以上

5.遺言の形式と種類

普通方式…①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言
特別方式…①危急時遺言 ②隔絶地遺言

1. 自筆証書遺言

・遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自筆してこれに押印する方式。
・遺言者の死亡後、家庭裁判所の検認が必要。
《注意事項》
・手書きであること ※ワープロ、ビデオ、録音テープは無効
・日付の記載方法 ※年月日を特定、○年○月吉日は無効
・押印 ※認印でも可

2. 公正証書遺言

・遺言者が口述した内容を、公証人が筆記する方式。
・家庭裁判所の検認は不要。
・証人2人の立会いが必要。

3. 秘密証書遺言

・遺言者が自己、または第三者が作成した遺言証書に署名押印し、市販の封筒等を用いて封をし、公証人が証人と共にその封筒に署名押印をする方式。
・家庭裁判所の検認が必要。
・証人2人が必要。

遺言の方式による長所と短所

遺言書の種類 長所 短所
自筆証書遺言 誰にも知られず一人で作ることが出来る。
費用がかからない。
何度でも簡単に作り直すことができる。
死後、家庭裁判所の検認が必要。
破棄・改ざん・隠匿の恐れがある。
遺言の有効性が争われる場合がある。
紛失や発見されない場合がある。
遺言の内容や形式に不備のある場合がある。
公正証書遺言 遺言書としての形式が保証されている。
公証人が関わるので内容が法的にも確実。
死後、家庭裁判所の検認不要。
公証役場に原本が残るので検索できる。
耳や目、手が不自由な人も作成できる。
費用がかかる。
(記載された相続財産により異なる)
証人2人が必要。
秘密証書遺言 遺言内容を人に知られない。
偽造・隠匿の心配がない。
遺言内容は、ワープロや代筆でもよい。
署名は自署。
死後、家庭裁判所の検認が必要。
費用がかかる。
証人2人が必要。
遺言内容に不備のある場合がある。

6.法定相続人の遺留分に注意

遺留分とは・・・一定の相続人に留保された相続財産に対する最低限の権利。

・父母(直系尊属)のみの場合 → 相続財産の3分の1
・その他(配偶者、子ども)→ 相続財産の2分の1
・兄弟姉妹 → 遺留分なし

遺留分減殺請求権・・・遺留分を侵している相続人や受遺者に不足分を請求すること。

7.公正証書の作成費用

目的の価額 手数料
100万円を超え、200万円以下 5,000円
200万円を超え、500万円以下 7,000円
500万円を超え、1,000万円以下 11,000円
1,000万円を超え、3,000万円以下 17,000円
3,000万円を超え、5,000万円以下 23,000円
5,000万円を超え、1億円以下 43,000円

以下、5,000万円までごとに3億円まで13,000円を加算。
10億円まで11,000円を加算。
10億円を超えるもの8,000円を加算。

① 但し、目的の価額が1億円までは、遺言手数料として11,000円を加算。
② 遺言で財産を貰う人が数名いる場合は、それぞれの金額ごとに手数料が計算される。
③ 役場外執務
日当…20,000円(4時間以内は10,000円)
交通費…実費
病床執務手数料…2分の1加算

よくある質問・事例

夫も私も共に70代の夫婦です。
最近、夫婦で将来について話し合うようになり、夫は子ども達に迷惑がかからないよう遺言書を作ろうと言っています。
できれば夫婦で子ども達に思いを残したいのですが、夫婦連名の遺言書を作ることはできますか?

残念ながら遺言書は各人が作成しなければならず、夫婦連名の遺言書は無効になります。(民法975条 共同遺言の禁止)

母が亡くなって半年たち、先日、実家のタンスを整理していたら、母の筆跡らしき遺言書が出てきました。
内容が気にかかり誰にも打ち明けずに、そのままにしてあります。どうしたらよいでしょう。

お母様の書かれた自筆証書遺言と思われます。家庭裁判所での「遺言書の検認手続き」が必要なので、封印してあれば開封をせずに、そのまま家庭裁判所に持っていきましょう。「遺言書検認の申立て」には、遺言者であるお母様の戸籍謄本や申立人及び相続人全員の戸籍謄本等が必要になるので、あらため家庭裁判所に確認しましょう。

夫は5年前に脳梗塞で倒れ、半身不随となり今は自宅で療養生活を送っています。
私たちには子どもがなく、夫は自分の亡き後の私の生活を心配してくれます。 夫には姉と妹が一人ずついますが、夫の父母が亡くなった時に遺産の話で揉めてから、もう何年も連絡をとっていません。 財産は自宅の土地建物と現金預金が800万円ほどあります、夫の亡き後も安心して暮らすには、どうすればいいでしょうか。

ご主人に「遺産のすべてを妻に相続させる。」という趣旨の遺言書を書いてもらいましょう。現在の法定相続分は、妻に4分の3、夫の姉妹に4分の1(姉妹はそれぞれ8分の1ずつ)となります。しかし上記のような遺言書を遺してもらうことで、すべての財産を妻であるあなたが相続でき、ご主人の亡き後も安心して今の家で暮らしていくことができます。兄弟姉妹には、相続人の最低限の取り分としての遺留分がないので、遺言書の内容を容易に執行することができます。また、遺言書の検認手続きが不要で、遺言者の意思能力も確認できる「公正証書遺言」をお薦めします。 

現在84歳の私は10年前に妻に先立たれ、今は近くに住む息子の嫁が1日おきに食事の世話等に通ってくれます。
息子は、とても私たちを大事にしてくれていたのですが、その息子も仕事中の事故で2年前に他界しました。
それにもかかわらず、嫁は相変わらず私の面倒を見てくれ、本当に感謝をしています。
亡くなった息子は一人息子で、息子夫婦には子どもはいません。
何とか嫁に私が遺していく預金とこの家を譲ってやりたいのですが。

大事にされていた一人息子さんが先に他界され、本当に残念ですね。もしあなたにご兄弟があれば、相続財産はご兄弟に、あるいはその子どもさんたちに継がれることになります。どんなにお嫁さんが面倒を見てくれても相続権はありませんから、お嫁さんに財産を「遺贈する」旨の遺言書を書いておくか、養子縁組をして相続させるかということになります。ご兄弟に遺留分はありませんので、お元気なうちに是非、「公正証書遺言」を作られることをお薦めします。

一昨年亡くなった父が遺言書をのこしていたらしいのですが、他の兄弟が先に見つけ、遺言書を見せてくれません。
公正証書遺言だったらしく、最近では銀行を廻って父名義の預貯金を解約し、相続手続きを進めているようです。
遺言書には私のことは一切書いていないと他の兄弟は言うのですが、何とか遺言書の内容を知ることはできないのでしょうか。

「公正証書遺言」は、公証役場に原本が残っており、相続人からの請求により検索することができます。お父様の住所地を管轄する公証役場に問合せをしてみてください。このとき相続人であることを証明する戸籍謄本が必要になります。その他の必要書類についても確認しておきましょう。

5年前に公正証書遺言を作りました。私には子どもが2人いますが、その頃、長男は私の事業を手伝い、自宅で同居をして孫2人も一緒に楽しく暮らしていました。
次男は、学生時代から家に寄り付かず、私の事業に対する批判的な意見ばかり言うので、次第に親子仲が悪くなり、遺言書も長男に自宅と預金の多くを遺す内容で作りました。
ところが最近の不景気で事業が傾き始めると、長男は私ばかりに責任を押し付け、自由に暮らしている次男を羨ましがって、自分も家を出たいと言い始めました。
私も私で、あんな内容の遺言書を作ったことを後悔しています。一度作った公正証書遺言を取り消すことはできますか。

遺言書は何度でも作り直すことができます。公正証書遺言の場合、自分で破棄しても原本が公証人役場に残っているので、それを失効させるためにも、新たに公正証書遺言を作り直したほうがいいでしょう。先に作った公正証書遺言を持参し、その旨を公証人に伝えて新しく作りましょう。

奪われた夫の財産について、どうしたらいいですか?

真理子さんは、夫の卓也さんと2人暮らしで子供がいません。両親は既に他界しており、肉親は卓也さんの弟のみでした。卓也さんの財産といえば真理子さんと2人で住んでいた建物と土地のみです。 しかし、この義理の弟は金銭の浪費が激しく、あちこちに借金を作り卓也さんにも幾度となく金の工面を頼みに来てました。そんな折、突然卓也さんが亡くなりました。そして不幸なことに卓也さんは遺言書を残してはいませんでした。遺言を残していないことによって、弟も相続人になります。弟の相続分は4分の1です。このことを知った弟は、自分にも相続権があると強く要求してきました。真理子さんが渡せる金はないというと、弟は建物と土地を売って金にかえることを要求してきたのです。真理子さんはやむを得ず建物と土地を手放しました。卓也さんが遺言書を残さなかったばっかりに死後このような不幸が妻である真理子さんに襲い掛かるなんて卓也さんには想像できなかったのでしょう。まずはご相談ください。

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